Copilot+ PCとは?Microsoftが発表した新世代AI PCの中身
2024年5月20日(現地時間)、Microsoftは特別イベント「Microsoft Build 2024」で、まったく新しいカテゴリーのWindows PC「Copilot+ PC」を発表しました。
Copilot+ PCは、同社のAI技術を最大限に活用するための機種として位置づけられており、これまでのPCにはなかった機能を提供します。
この記事では、Copilot+ PCとは何か、その特徴や機能などを詳細に解説します。
Copilot+ PCとは?
Copilot+ PCは、AIを駆使した新世代のWindowsパソコンで、高性能なチップと強力なAIを組み合わせて設計されています。この新しいPCは、計算速度やバッテリー寿命だけでなく、ユーザーの体験そのものを変えることを目指しています。
Copilot+ PCの特徴として、Microsoftは次のポイントを挙げています。
- 40TOPS以上(1秒あたり40兆回以上の演算ができる性能)の計算能力を持つ新しいチップ
- 終日もつバッテリー寿命を実現し、最大22時間の動画再生が可能
- Recall、Cocreator、Live CaptionsなどのWindowsの高度なAI機能をサポート
- Microsoft Surfaceをはじめとする主要OEM(Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、Samsung)から提供される美しいデザインと軽量・薄型のデバイス
Copilot+ PCにより、今まで不可能だった多くのタスクを、他のどのPCよりも高速かつ効率的に実行できるとされています。
他のWindows PCやMacBookと比較すると、Copilot+ PCは次の点で優れています。
- AIの処理性能が最大20倍向上
- バッテリー寿命が最大20%向上
- Arm64ネイティブアプリのサポート
- セキュリティとプライバシー保護の充実
Copilot+ PCは、最新のNPU(Neural Processing Unit)を活用することで、AI関連の処理の処理速度や効率が向上しています。
NPUは、AI関連の処理に特化したプロセッサーです。CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)はそれぞれ、一般的な計算や映像処理に特化していますが、NPUはAI関連の処理に特化しています。CPUやGPUでもAI関連の処理は可能ですが、NPUを使うことで電力効率が向上し、他の処理に影響を与えずにAIを実行できます。
Microsoftは「Windows次世代AIデバイスのハードウェア要件」(おそらくCopilot+ PCのハードウェア要件のことと思われる)にて、次のような最小システム要件を挙げています。
- 承認されたリストに含まれる、40TOPS以上のNPUを組み込んだプロセッサーまたはSoc(システムオンチップ)
- 16GB以上のDDR5またはLPDDR5メモリー
- 256GB以上のSSDまたはUFSストレージ
これらのスペックは、Copilot+ PCに必要な、通常のWindows 11の最小システム要件の増分要件として示されています。したがって、これらの条件を満たしていなくてもWindows 11を実行できますが、Copilot+ PCのAI関連の機能は利用できない可能性があります。
Copilot+ PCの機能
次に、Copilot+ PCでは、具体的にどのようなことができるのかを見ていきましょう。
Recall機能
Recallは、PC上で見たり操作したりしたことをほぼ瞬時に確認できるようにする機能です。
これまでは、どのフォルダーにファイルを保存したかや、どのWebサイトで目当ての情報を見つけたかを覚えておかなければいけませんでした。しかし、Recallを使えば情報をタイムライン上に整理し、瞬時に振り返って確認できます。
たとえば、過去に見たWebページや受け取ったメールの内容を思い出したいとき、Recallを使うとタイムラインを通じて簡単にアクセスできます。また、Snapshot機能を使えば、探しているメールやチャットに素早く戻れます。
Cocreator機能
Cocreatorは、AIを活用した画像生成・編集機能です。Windowsに組み込まれており、自然言語で作りたい画像を指示するだけで、新しい画像をほぼリアルタイムで生成できます。
たとえば、Windows標準のペイントアプリやフォトアプリなどでこの機能を利用でき、インクストロークとテキストプロンプトを組み合わせることで、直観的に画像を生成できます。画像の細かな調整も簡単にできます。
Restyle Imageを使うと、写真に新しいスタイルを適用できます。たとえば、写真をサイバーパンク風などのプリセットスタイルに変化させられます。
また、画像の生成や編集はデバイス上で実行されるため、プライバシーの心配もなく、無制限に画像を生成できます。生成した画像は、自分の好みに合わせて微調整でき、気に入ったものはコレクションとして保存できます。
Live Captions機能
Live Captionsは、音声をリアルタイムで英語の字幕に変換する機能です。40以上の言語に対応しており、オフラインでも動作します。現時点では、英語以外の言語への翻訳の対応については明言されていません。
その他の機能
Copilot+ PCは、Adobe、DaVinci Resolve Studio、CapCut、Cephable、LiquidText、djay Proなどのソフトと連携できるようになっています。
Adobe Photoshopでは、AIを活用した画像編集機能が搭載されており、DaVinci Resolve Studioでは、NPUアクセラレーションによるMagic Maskを使って、オブジェクトや人物へエフェクトを適用できます。
ただし、サードパーティ製のこれらのソフトの多くの機能は、NPUを搭載していないPCでも利用できます。
たとえば、PhotoshopのAI関連の機能はNPUに最適化予定とのことですが、NPUを搭載していないPCでもクラウドを介して利用できます。また、DaVinci Resolve Studioの機能も、NVIDIAのGPUを搭載したPCでCUDAを利用することで高速化できます。
対応ソフトとの連携の他にも、Copilot+ PCには、CopilotというAIが搭載されています。キーボード上のCopilotキーを一回押すだけでアクセス可能で、最先端のAIモデルを活用した自然な音声対話が可能です。
Copilotは、Copilot+ PCではない従来のPCでも利用可能です。Copilot+ PCと従来のPCのいずれでも、Copilotはタスクバーの右端に表示されており、これをクリックするだけで言葉でやり取りできるAIが呼び出されます。なお、Windows 11では、Copilotの追加によってデスクトップを表示するアイコンが無効化されるなどの変更も加えられています。
対応PCメーカーとモデル
Copilot+ PCは、主要なOEMから提供されます。以下は、Copilot+ PCの提供メーカーとモデルの一部です。
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Microsoft:新しいSurface Pro、新しいSUrface Laptop 13.8インチ
これまでMicrosoftは、Surface Pro 7やSurface Pro 8というように、Surfaceシリーズを世代を示す番号で区別していました。しかし、現時点では単に「New Surface Pro」「New Surface Laptop 13.8”」(日本語ではそれぞれ「新登場Surface Pro」「新登場Surface Laptop 13.8インチ」)とのみ記載されています。
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Acer:Swift 14 AI
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ASUS:Vivobook S 15
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Dell:XPS 13、Inspiron 14 Plus、Latitude 7455など
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HP:OmniBook X AI、EliteBook Ultra G1q AI
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Lenovo:Yoga Slim 7x、ThinkPad T14s Gen 6
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Samsung:Galaxy Book4 Edge
Copilot+ PCの発売日は、2024年6月18日で、価格は$999からです。Microsoft公式サイトや各メーカーのWebサイトから事前予約が可能です。
新しい第11世代Surface Proについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
まとめ
Copilot+ PCは、AIを活用した新世代のWindowsパソコンで、高性能なチップと強力なAIを組み合わせて設計されています。Recall、Cocreator、Live Captionsなどの高度なAI機能をサポートし、他のPCよりも高速かつ効率的にタスクを実行できます。
Copilot+ PCは、2024年6月18日から一般販売が開始され、価格は$999からです。Microsoft公式サイトや各メーカーのWebサイトから事前予約が可能です。
Copilot+ PCは、Windowsの新しいカテゴリーを切り開く新しい製品で、今後のWindowsパソコン市場に大きな影響を与えることが期待されます。