応募した記憶のない謎のキャンペーンに当選した話
始まりはこのツイート。何かのキャンペーンに当選したらしい。
※怖い人が家に来たら困るので、一部にぼかしをかけています。アイコンはギフトカードの束の画像。

さて、この画像には、いくつかの不審な点があります。
- 「【公式】キャンペーン」と書いてあるが、何のキャンペーンか書かれておらず、具体性がない
- 別のアカウントに誘導している
1については、企業がキャンペーンを実施する場合、その企業のアカウントで実施することが多い印象を受けます。わざわざキャンペーンのためにアカウントを作ったのでしょうか。
2については、垢BAN対策と考えられます。しかも、そもそも私は「キャンペーン」に応募した記憶がありません。
しかし、もしかしたら無意識に応募したのかもしれません。指定されたアカウントの固定ツイートを見てみます。

ギフトコード1万円分または豪華特賞がもらえるアンケートへのリンクが貼られています。
さて、ここで疑問が増えました。ここまで、すべて誰でも見られるツイートです。つまり、「当選」した人でなくてもアンケートにたどり着けるということです。当選って何でしたっけ?
ツイートの詳細を見てみると、150件の引用リツイートがあります。また、リプライが制限されています。なぜ制限しているのでしょう?

不思議ですが、いったん引用リツイートを見てみましょう。
![[通知はまだ届いていません]と表示されており、引用リツイートを閲覧できない](/_next/image?url=%2Fapi%2Fmedia%2Ffile%2F2022-04-07-00-47-41.png&w=3840&q=75)
どうしてでしょう。引用リツイートが150件あるはずなのに、1件も表示されません。これはつまり、引用リツイートしたアカウントが鍵垢だったか、「キャンペーン」のアカウントにブロックされていることを示唆しています。
まさか150個もの鍵垢に引用リツイートされるなんてことはありませんよね?ますます怪しい。
でも、まだ分かりません。うっかりしてしまっただけで、本当にギフトがもらえるかもしれません。アンケートを開いてみます。
と、その前に、念のためウイルススキャンをかけます。
Twitterでは、ツイートに含まれるリンクがTwitterの独自の短縮URLに置き換えられています。ブラウザーのアドレスバーに次のような形式で入力することで、転送先を調べられます。
view-source:短縮URL
ごちゃごちゃとした文字列が表示されます。URL=
のあとの部分(モザイクがかかっている部分)が転送先のURLです。「″」は含めません。

この転送先のURLを VirusTotal で調べてみます。

既知のマルウェア(コンピューターウイルス)は検出されませんでした。
次に、 Googleセーフブラウジング でも調べてみます。

データがないそうです。既知の詐欺サイトでもなさそう。
ということで、アンケートのURLを開いてみます。アクセス元が分からないようにVPNを使用し、念のためJavaScriptをオフにしてアクセスしてみます。

最近のサイトにしてはシンプルなつくり。
フッターを見ると「Copyright 2022 キャンペーン運営事務局」となっています。相変わらず具体性がなく、何のキャンペーンか分かりませんね。
「まもなく締め切り」だそうです。急がなきゃ!!!とここで残念なお知らせ。アンケートに答えるにはLINEで友達追加しなければならないようです。
でも、私は知り合いしかLINEに追加しないんですよね。
ちなみに、トップページは 404 Not Found を返します。

では、サイトの運営者に直接連絡を試みてみましょう!
whoisコマンドでドメインを調べます。

うーん、Whois情報公開代行を使っていますね。登録者が誰なのか分かりません。これでは連絡を取れませんね。
詐欺サイトとして報告する
ここまで読んだ皆さんは分かると思いますが、これは明らかな詐欺です。Firefoxのメニュー→[ヘルプ]→[詐欺サイトを報告(D)...]から、詐欺サイトとして報告しました。

また、先ほどwhoisで調べた際に「Registrar URL」が「お名前.com」のものになっていたので、 不正利用の報告 から報告しておきます。問題のツイートについては、 魚拓 のURLも添付しておきました。
さて、この詐欺サイトはどうなるのか。進展があれば、記事を更新する予定です。
更新(2022/04/07)
記事を書いていたら、当選を知らせてくれたアカウントが消えていました。「凍結」とは表示されていないので、アカウントの所有者が自ら消したのでしょう。

また、アンケートサイトへのリンクがあったアカウントは、名前を変えて鍵垢になっていました。

そして、アンケートサイトも閲覧できなくなっています。

403 Forbidden を返しています。

ドメイン登録業者に停止されたか、詐欺師が逃げた(あるいは目立ちすぎないように「休暇」に入った)のでしょう。関連するアカウントに変化があり、トップページの404表示はそのまま。さらに、 favicon も生きていることから、おそらく後者の可能性が高そうです。
更新(2022/04/07 17:09)
リンクを貼っていたアカウントと、アンケートサイトが復活していました。周期的に「休暇」「復活」を繰り返している可能性があります。
なお、当選通知をツイートしていたアカウントは削除されたままです。
更新(2022/04/07 17:25)
フィッシング対策協議会の 報告フォーム にも送信しました。また、問題のTwitterアカウントをTwitterに 報告 しました。
更新(2022/10/09)
この記事のPV数が増えていたので追加の調査をしました。
同様の名前のアカウントをTwitter APIで検索したところ、121件(2022/09/29時点)ものアカウントが見つかりました。前述のように、定期的に名前を変更して「隠れている」ようなので、実際の数はもっと多いと思われます。
大量のアカウントを使って大量の人にメンションし、「数打てば当たる」方式で活動しているのでしょう。この詐欺が最近また流行っているようで、私のもとにも来ました。不審な当選通知には注意しましょう!
まとめ
次のような「当選通知」には注意しましょう。
- 応募した記憶がない
- 「かなり前の企画」と書かれている(応募した記憶がないことを誤魔化すため)
- キャンペーンについて、具体性がない
- 別のアカウントに誘導される(垢BAN対策)
- 「キャンペーン」に当選したと書かれているのに、誰でも閲覧できる場所にURLが貼られている(「当選」の意味がない)
- リプライが制限されている(詐欺だと指摘できないようにするため)
- 大量の引用リツイートが存在しているはずなのに、表示できない(詐欺だと指摘したカウントをブロックしている可能性がある)
- 「まもなく締め切り」「お急ぎください!」など、焦らせるような文章がある(判断を誤らせるため)
- サイトのフッターやアカウント名から、運営者が誰なのか分からない。または具体性がない
- 運営者が書かれている場合でも、その運営者について十分に調査しましょう
- LINEの友達追加を求められる
以上、「応募した記憶のない謎のキャンペーンに当選した話」でした。応募した記憶のないキャンペーンに当選したと連絡が来たら、詐欺ではないかと疑うようにしましょう。
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生まれた時から、母国語よりも先にJavaScriptを使っていました。ネットの海のどこにもいなくてどこにでもいます。
Webフロントエンドプログラマーで、テクノロジーに関する話題を追いかけています。動画編集やプログラミングが趣味で、たまにデザインなどもやっています。主にTypeScriptを使用したWebフロントエンド開発を専門とし、便利で実用的なブラウザー拡張機能を作成しています。また、個人ブログを通じて、IT関連のニュースやハウツー、技術的なプログラミング情報を発信しています。