ろぼいんブログ

HEISEI-VHSは危険?生成AIの学習に使われる?検証してみた!

地下鉄駅風のVRChatワールドにVRChatアバター「ホノカ」が立っている画像。ホノカは白と黒を基調とした服を着ており、画像全体は劣化したような加工が施されている
撮影場所:地下鉄霧代病院前駅(Metro Kirishiro Hosp․ Sta․)
HEISEI-VHSで加工

Xでは最近、平成初期のVHSをイメージして画像を加工できる「HEISEI-VHS」が流行しています。

しかし一部のユーザーからは、HEISEI-VHSで画像を加工すると画像データが収集されるのではないか、画像の加工に生成AIを使っているのではないか、HEISEI-VHSで加工した画像が生成AIの学習に使われるのではないか、といった懸念の声が上がっています。

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この記事では、Webフロントエンドを専門としている筆者がHEISEI-VHSにまつわるこれらの懸念を検証してみました。

目次

まずはプライバシーポリシーを確認

まずは、HEISEI-VHSのプライバシーポリシーを確認してみました。

左下のインフォメーションボタンをクリックするとプライバシーポリシーと利用規約が表示されるようになっており、プライバシーポリシーには次のように書かれています。

プライバシーポリシー

本アプリケーションは、すべての画像処理をブラウザ上のWebAssemblyでローカルに実行します。画像データが外部サーバーに送信されたり、保存されたりすることは一切ありません。

つまり、プライバシーポリシーに書かれていることが本当ならば画像の加工処理はPC上で実行されるため、画像がサーバーに送信されることはないということになります。

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次に、この主張が本当なのかを検証します。

サーバーに画像がアップロードされる?生成AIの学習に使われる?

HEISEI-VHSにドラッグ&ドロップした画像がサーバーにアップロードされるのかどうかを検証します。

画像がサーバーにアップロードされないのであれば、画像データが収集されることはありませんし、収集されないのであれば生成AIの学習に使われることもないと考えられます。

通信内容を確認する

ブラウザーの通信内容を確認できる開発者ツールを開いた状態でHEISEI-VHSを読み込み、適当な画像をドラッグ&ドロップしてみた結果がこちらの画像です。

HEISEI-VHSのスクリーンショット。右側にブラウザーの開発者ツールが開かれており、通信内容が表示されている

赤い枠線で囲った部分はページを開いた時点で読み込まれているもので、HTML、CSS、JavaScript、Wasm、フォントが含まれます。

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HTMLはWebページの構造を定義するもので、CSSはHTMLを使って作成したWebページの見た目を定義します。

JavaScriptとWasmは、ボタンをクリックしたときの挙動や画像の加工処理などを担当するものです。

画像をドラッグ&ドロップしたあとに表示されている通信内容は1件のみですが、これは加工後の画像データです。

加工後の画像データは、通信内容に表示されているものの実態はdata URLと呼ばれているものです。

data URLはそのURL自身にデータが埋め込まれており、実際にはどこかのサーバーからデータを取得しているわけではありません。

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少なくともブラウザーの開発者ツールのネットワークタブに表示されている範囲では、画像はサーバーに送信されておらず不審な通信も見られませんでした。

ソースコードを確認する

前述のように、少なくともブラウザーの開発者ツールに表示されている範囲では不審な挙動は見られませんでした。

しかし、実際には開発者ツールに表示されないように通信する手法が存在しており、以下の記事はその一例が紹介されています。

ツールが完全に安全だと確認するためには、より詳細に通信内容を確認できる外部ツールを使用したり、ソースコード(Webページのプログラム)を確認したりする必要があります。

HEISEI-VHSのHTMLを確認したところ、main.jsというJavaScriptファイルが読み込まれており、このmain.jsは内部でheisei_vhs_wasm.jslang.jsというJavaScriptファイルを読み込んでいました。

筆者が実際に読んで確認したところ、それぞれのファイルの内容は次のとおりでした。

  • main.js:UI関連の処理を担っており、heisei_vhs_wasm.jslang.jsを読み込んで制御する処理も含まれる
  • heisei_vhs_wasm.js:画像を加工するWasmを読み込んだり、WasmとJavaScriptの橋渡しをしたりしている
  • lang.js:UIの日本語のデータと英語の翻訳データが含まれている

各ファイルの処理を慎重に確認しましたが、サーバーに画像データを送信するような処理はありませんでした。

また、当然ながらドラッグ&ドロップされた画像を生成AIの学習に使用するような処理もありませんでした。

そもそも、一般ユーザーのPC上で短時間で生成AIの学習処理を実行することは不可能なので、サーバーにアップロードしない限りは生成AIの学習は現実的ではありませんし、仮にPC上で学習処理を実行できたとしてもその結果をサーバーにアップロードできなければ学習の意味がありません。

画像の加工に生成AIを使っている?

画像を加工する処理はWasmで実行されていますが、Wasmは人間が読みやすいように作られていない上に、HEISEI-VHSのWasmをデコードすると10万行以上にもなります。

Wasmの処理内容を確認することは非現実的なので、生成AIを使っているかどうかについて断言することはできません。

しかし制約や挙動を踏まえると、生成AIを使っていない可能性が非常に高いと考えられます。

第一に、HEISEI-VHSのような画像加工は生成AIを使用しない古典的な画像処理で十分に実現できる範囲なので、加工に生成AIを使うことは開発・実行の面でコストに見合いません。

生成AIの実行には膨大な計算が必要なので、(そもそもHEISEI-VHSはサーバーに画像を送信していませんが)無料のサービスで個人がサーバー上で生成AIを動かせば破産してしまいますし、ユーザーのPC上で動かすならかなり重いサービスになってしまいます。

HEISEI-VHSはスマートフォンでも軽量に動作するようになっており、フィルターの設定を変更してもすぐに反映されることから、古典的な画像処理の可能性が高いです。

第二に、HEISEI-VHSではいくつかのフィルターのオン・オフを切り替えたり、フィルターの強さなどを調整したりできるようになっています。

生成AIでそのような細かいフィルターの調整をすることは難易度が高く、古典的な画像処理ならば容易です。

第三に、HEISEI-VHSの通信内容やJavaScriptには生成AIのモデルをダウンロードしているとみられる処理が存在しません。

一般的な生成AIでは、数GBから場合によっては数十GB、数百GBにもおよぶモデルをダウンロード・実行する必要がありますが、HEISEI-VHSにはそのような処理がありませんし、ページの読み込みも瞬時に完了します。

HEISEI-VHSが生成AIを絶対に使っていないと断言することはできないものの、これらの理由から画像の加工にはほぼ確実に生成AIを使っていないと考えられます。

検証結果

検証結果をまとめると次のようになります。

  • 画像データが収集される?→HEISEI-VHSは画像をサーバーにアップロードしておらず、加工はローカルで完結している
  • 生成AIの学習に使われる?→画像データが収集されていないので生成AIの学習に使われることもない
  • 画像の加工に生成AIを使っている?→使っていない可能性が非常に高い

これらの観点に限って言えば、HEISEI-VHSはローカルで安全に加工が完結するツールということになります。

ただし、画像やファイルをドラッグ&ドロップしたり、個人情報などを入力したりするWebサイトやソフトウェアを警戒すること自体は非常に重要です。

記事執筆時点で筆者が確認した範囲では、HEISEI-VHSは安心して利用できるツールでしたが、インターネットにはそうでないツールも存在しています。

Webサイトやツールを使用する前に慎重になることは依然として重要です。

まとめ

VHS風のフィルターで画像を加工できるHEISEI-VHSが画像データが収集しているのではないか、画像の加工に生成AIを使っているのではないか、HEISEI-VHSで加工した画像が生成AIの学習に使われるのではないか、といった懸念について検証しました。

HEISEI-VHSは画像データをサーバーにアップロードしておらず、生成AIの学習に使われることもありません。

また、画像の加工には生成AIを使わずに古典的な画像処理を使用している可能性が高いと考えられます。

しかし、インターネット上のWebサイトやツールに警戒すること自体は問題なく、むしろ重要です。

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生まれた時から、母国語よりも先にJavaScriptを使っていました。ネットの海のどこにもいなくてどこにでもいます。

Webフロントエンドプログラマーとして、TypeScriptを用いたWebアプリやブラウザー拡張機能を制作。Xのシャドウバン検知ツール「Shadowban Scanner」やリンクカード復活ツール「Restore Link Card」を公開し、国内外のメディアで紹介されました。iGEM 2023ではJapan-UnitedチームのWikiを制作してGrand Prizeの獲得に貢献。ブログではXやSNSの最新ニュース、不具合の検証と対処法、フロントエンド開発の知見を発信しています。