DeepSeekとは?使い方から料金、安全性まで徹底解説!

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画像:DeepSeekの公式サイト

AI技術の進化が加速するなか、新たに台頭してきた大規模言語モデル(LLM)に注目が集まっています。中でも、最近話題となっているのが、高性能でありながら無料でモデルの重みを公開している「DeepSeek」です。

従来の「高性能AIには膨大なGPUリソースが必要」という通説を覆し、「DeepSeekショック」という言葉が生まれるほど大きな波紋を呼んでいます。

この記事では、DeepSeekの概要から使い方、料金、安全性やリスクまで詳しく解説します。

DeepSeekとは

DeepSeekとは、テキストベースでやり取りをできるAIの一種の大規模言語モデル(LLM)を開発・公開している企業と、その企業が公開しているLLMシリーズの名前です。

2025年1月27日には、アメリカのApp Storeにおける無料アプリランキングでChatGPTを抜き、DeepSeekのアプリが1位になったことでも注目を集めました。

DeepSeekシリーズは、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなどの主要なLLMに匹敵する性能をもちながらも、モデルのデータ(重み)を無料で公開している点が大きな特徴です。

通常、ChatGPTを開発しているOpenAIのような企業は、AIをサービスとして提供することで収益を得ているため、基本的にモデルの重みは公開しません。

しかし、DeepSeekはAI単体で利益を上げるビジネスモデルを掲げていないため、低コストでAIを提供でき、さらにモデルの重みを誰でも利用できる形で無料公開しています。

DeepSeekはいくつかのLLMを公開していますが、その中でもDeepSeek-R1はOpenAI o1に匹敵する性能を示したことで話題となりました。

従来のLLMはとくに何も考えずにそれらしい文章を出力するだけでした。一方で、OpenAI o1やDeepSeek-R1は最終的な文章を出力する前に思考するステップ(推論)を挟むことで、回答の品質を上げていることが特徴です。

プログラムを書くときは従来のモデルよりも修正なしで動き、バグの少ないプログラムを出力できる傾向があります。また、文章の執筆においては、より論理的で筋の通った高品質な文章を出力できます。

OpenAI o1を利用するには、月額約3,000円のChatGPT Plusまたは月額約3万円のChatGPT Proに加入する必要がありますが、DeepSeek-R1はDeepSeekの公式サイトから無料で利用できます。

DeepSeekはどこの国の企業?

DeepSeekはもともと、中国のヘッジファンド「幻方(High-Flyer)」の研究部門の「Fire-Flyer」からスタートした中国企業です。

DeepSeekが高性能なLLMを低コストで開発・運用できるのは、High-Flyerの資金とGPUリソースを活用しているからです。

そのため、DeepSeek単体で利益を上げる必要がなく、無料でモデルの重みを公開できるというわけです。

DeepSeekショックとは

アメリカによる中国へのGPU輸出規制を背景に、DeepSeekは少ないコンピューターリソースでも高性能なモデルを開発・運用する手法を確立しました。

一方で、OpenAIは膨大なリソースをかけることで高性能なAIを実現するというスケーリング則を見出しており、従来は「高性能なAI=巨大な計算リソース」という考え方が主流でした。

しかし、DeepSeekの登場によって「もっと少ないリソースでも十分に高性能なAIを作れるのではないか」という見方が生まれ、現在のAI開発の常識に一石を投じています。

従来の見方では、生成AIの普及が進めば進むほど膨大なコンピューターリソースが必要になるため、GPU市場をけん引するNVIDIA株などが上昇すると考えられてきました。

しかし、DeepSeekが発表した少ないGPUリソースで高性能なLLMを開発・運用する技術は、この前提を大きく揺るがすものです。

その結果、「高性能なAIの開発には膨大なリソースが必要」というスケーリング則が絶対ではない可能性が指摘され、AI関連銘柄の株価が下落したことで「DeepSeekショック」という言葉が生まれました。

DeepSeekはローカルで動かせる

DeepSeekのモデルは無料で公開されており、誰でもローカル環境で利用できます。

ただし、モデルのサイズが大きく、大容量のVRAMを搭載した高性能なGPUが必要になるため、一般ユーザーが自宅のパソコンでフルスペックのDeepSeekを動かすの非現実的です。

一方で、「蒸留」と「量子化」という技術を用いて、より小さなモデルをローカルで動かすことも可能です。たとえば、PocketPalのようなアプリを使うことで、DeepSeek-R1を蒸留・量子化した小型モデルをスマホ上で利用できるようになります。

蒸留は、高性能かつ大規模なLLMが生成した出力(合成データ)を利用して、小型モデルを学習させる手法です。また、量子化は、モデルの精度をいくらか落とすことで、計算やメモリーの負荷を軽減する手法です。

ただし、こうした小型モデルは回答の品質が低く、スマホや性能の低いGPUでは生成速度も遅くなりがちです。とく理由がない限り、オンライン版のDeepSeekを利用するのがオススメです。

DeepSeekの料金は?

DeepSeekのWeb版は、基本的に完全無料で利用できます。これは、前述のとおり収益モデルが異なることが理由です。

ChatGPTのように月額課金をしなくても高性能なモデルを試せる点が魅力です。

一方、API版(自身のアプリやWebサイトにDeepSeekを組み込む場合)は有料となっています。たとえば、ビジネス用途で独自のサービスを開発する際などには、DeepSeekのAPIを利用すると料金が発生する仕組みです。

しかし、個人利用や研究目的であれば、公式サイト上で無料のWeb版を使うだけでも十分に高品質なAIを利用できます。

DeepSeekの使い方

DeepSeekは、公式サイトから利用できます。

  1. DeepSeekの公式サイトにアクセスします

  2. Googleアカウントかメールアドレスを利用してアカウントを作成し、ログインします

  3. 画面下部のテキストボックスに質問や指示を入力します

    DeepSeekのチャット画面のスクリーンショット
    DeepSeekのチャット画面

DeepSeekは、デフォルトでは推論しないモデルが使われるため、難易度の高い推論(思考)を要するタスクを任せたい場合は、[DeepThink(R1)]をオンにします。これにより、DeepSeek-R1という高性能な推論モデルを利用できます。

[DeepThink(R1)]をオンにしたようす
[DeepThink(R1)]をオンにすると高性能なモデルを利用できる

また、Web検索が必要な知識系の質問をする場合は、[Search]をオンにします。DeepSeek-R1とWeb検索を組み合わせることで、最新情報を参照しながら高品質な回答を得られます。

ChatGPTでWeb検索できる「ChatGPT search」ではOpenAI o1のような推論モデルが利用できず、従来のLLMしか使えません。

一方でDeepSeekの場合はWeb検索と推論モデルを同時に活用できます。

[DeepThink(R1)]と[Search]をオンにしたようす
[DeepThink(R1)]と[Search]を組み合わせることも別々で利用することもできる

DeepSeekにはアプリがあり、スマホやタブレットからも利用できます。アプリ版は、Web版と同様に無料で利用できます。

DeepSeekの安全性は?データ漏えいのリスクも

DeepSeekは中国企業が提供しているサービスで、利用規約には次のように書かれています。

2.5 Under the agreed conditions, you have the option to discontinue the use of our Services, terminate the contract with us, and delete your account. However, even after the user deletes the account, we still have the right to:

  • Retain certain data of the user as required by laws and regulations.
  • Exercise the rights stipulated in these Terms for any illegal or violating behavior committed by the user during the use of the Services before deletion.

筆者訳:
2.5 ユーザーは、合意された条件のもと、当社サービスの利用を中止し、当社との契約を解除し、アカウントを削除できます。ただし、利用者がアカウントを削除した後も、当社は以下の権利を有します:

  • 法令にもとづき、利用者の特定のデータを保持すること。
  • 削除前の本サービスの利用中に利用者が行った違法または違反行為に対して、本規約に定める権利を行使すること。

このように、DeepSeekはアカウントを削除しても、法律や規則にもとづいて一部データを保持し続ける場合があるとされています。

また、DeepSeekのプライバシーポリシーによると、ユーザーのデータは中国国内のサーバーに保存されています。

DeepSeekのユーザーの情報は、法執行機関に開示される可能性があります。この点は基本的にどのサービスでも同様ですが、DeepSeekの場合はとくに中国企業であることが懸念事項です。

中国企業は、中国の国家情報法にもとづき、国家情報活動に協力する義務があります。ビジネス上の機密情報や個人情報をDeepSeekに入力してしまうと中国政府に漏えいする可能性があるため、注意が必要です。

ほかにも、DeepSeekに対して、中国共産党に批判的な質問や天安門事件に関する質問などを入力すると定型文で返されたり、はぐらかされたりします。そのため、教育用途や、政治的に敏感な話題を含む用途には適しません。

ChatGPTもアメリカの思想にもとづいて作られている側面はありますが、DeepSeekほどは出力が統制されていません。

まとめ

DeepSeekは、膨大な計算リソースを投下するのが当たり前とされてきたAI開発の常識に一石を投じました。公開されたモデルデータを誰でも利用できるという点が特徴です。

その一方で、サービスを提供する企業が中国に拠点を置いており、データ管理や表現の自由といった面で注意が必要です。

高精度な推論モデルを完全無料で使える点は非常に魅力的ですが、情報漏えいや表現規制にかかわる懸念を踏まえて用途や場面を慎重に見極める必要があります。

#AI#DeepSeek#解説
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生まれた時から、母国語よりも先にJavaScriptを使っていました。ネットの海のどこにもいなくてどこにでもいます。

Webフロントエンドプログラマーで、テクノロジーに関する話題を追いかけています。動画編集やプログラミングが趣味で、たまにデザインなどもやっています。主にTypeScriptを使用したWebフロントエンド開発を専門とし、便利で実用的なブラウザー拡張機能を作成しています。また、個人ブログを通じて、IT関連のニュースやハウツー、技術的なプログラミング情報を発信しています。